五感(嗅覚、味覚、聴覚、視覚、触覚)が一つずつ喪失していく未知の病気。
世界中の人間がこの病気におかされていくなかで、英国の一組の男女が恋に落ち、愛を育んでいきます。
当然、この二人も徐々に五感を失われていきます。
ちなみに、この病気の原因も治療法も提示されません。
なぜなら、それがこの物語の主題ではないから。
あくまでも主題は、二人の愛です。
シェフのマイケルと感染症学者のスーザン。
二人とも大きな秘密(というか傷、後悔)を抱えるがゆえに、刹那的な行動をとっていたのですが、お互いに出会い惹かれ、病によって感覚を失うことで愛を知り、深めていきます。
二人が住む英国だけでなく、メキシコやインドなどの情景を入れることで、この病が世界的なものだということを嫌というほど思い知らされます。
そして混乱する人々が映し出されることで、二人の愛が際立ちます。
感覚を失う前に前兆症状があり、嗅覚を失う前には突悲しみが全身を襲い、味覚を失う前には飢餓感に包まれます。
それでも人々は前向きに生きてきます。
バイオリンの音や草木の感触で森の匂いを思い出し、味覚は忘れ去られても料理の歯ごたえや温かさ、冷たさを楽しみます。
人間の力強さを感じられます。
一方で、聴覚を失う前には孤独感に苛まれ、それ故に攻撃的暴力的になります。
人間が普段抑圧しているものを描き出しているようでした。
そして、視覚を失う前には、喜びに満ちあふれます。
触覚だけが残されたからこそ、互いに許し合い、求め合い、温もりを感じ合います。
嗅覚、味覚は映画の中だけ表現でしたが、それが聴覚、視覚に行くに連れ表現が変わって行きます。
それは、映画を観ている私たちにもはっきりわかるものです。
先に聴覚を失ったのはマイケルなのですが、そこから物語が終わるまでの展開には、圧倒されながらも共感しました。
公式サイトを見ると公開されている場所が少ないのですが、なんとかして多くの人に観てもらいたい映画です。
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