コンゴ、日本、アメリカの三ヶ所を舞台に、白兵戦、頭脳戦、情報戦が繰り広げられていきます。
コンゴでの主人公はジョナサン・イエーガーで、四人の傭兵部隊ガーディアンを率います。彼の動機は、治療法がなく特効薬もない病を患った息子を救うこと。
日本での主人公は古賀研人で、最初は亡父に巻き込まれる形だったものの、途中からは自らの医師で特効薬の合成に従事します。動機は、科学者の本分と患者を直接自分の目で見てしまったこと。
アメリカでの主人公はアーサー・ルーベンスで、ネメシス作戦をすすめる実質的な責任者です。しかしたった一人しかいない新しい種へのジェノサイドを防ぐために、少しずつ作戦の方向を変えていきます。
それぞれが自分の役割に全力で取り組むことで、物語は展開し、自分の目的を達成していきます。
三人と、彼らを取り巻く人々が結束することで、ジェノサイドは防がれます。
その過程が、とても熱いです。
誰かがほんの少しでも気を抜けば、ほんの少しでも計画を狂わせてしまえば、ジェノサイドが実行されていたでしょう。
それ故に、読み終えた時の安堵感はひとしおです。
細かなエピソードがさりげなく散りばめられていて、物語が佳境に入ったときに、そのエピソードゆえの展開が起きていきます。その度に前に戻って該当部分を探しだしながら、読み進めて行きました。
特に、人類学者ナイジェル・ピアースが「日本の援軍」という言葉を繰り返していて、研人のことだとばかり思っていたので、援軍の正体を知ったときには、ぐうの音も出ませんでした。
これもしっかりヒントが出ていたんですよねえ。
一番気に入ったのは、合衆国大統領科学顧問メルヴィン・ガードナーの言葉です(357頁)。物事の本質をついています。
恐ろしいのは知力ではなく、ましてや武力でもない。この世でもっとも恐ろしいのは、それを使う人格なんです。
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